世界の知的障害分野に大きな影響を与え続ける(※)AAIDDの至宝「知的障害の定義」(10年に一度改定)。本書は、その最新版である第11版を日本発達障害福祉連盟が日本語訳したものです。

(※)AAIDD(American Association on Intellectual and Developmental Disabilities:米国知的・発達障害協会用語・分類特別委員会)
共訳
太田俊己、金子健、原 仁、湯汲英史、沼田千妤子
発行
公益社団法人 日本発達障害連盟
定価
6,000(税別)
ISBN4-902448-02-07

 

 

 

日本発達障害連盟が本マニュアル「知的障害:定義、分類および支援体系」を翻訳し、出版するのは、第10版と今回の第11版で2回目になる。
第11版では第8章で取り上げる臨床的判断という概念がより洗練されたものとなっている。臨床的判断は極めて実際的だが、用いられ方によって「誤判断」の危険性が高まる「両刃の剣」なのだ。専門職側からすると、アセスメントの重要性が再三強調されているのは第9版からの変わらぬ流れと受け止めたい。DSM-ⅣやICD-10、そしてICFなどの他の分類体系との整合性の議論にも触れている。おそらく、本マニュアルの考え方がやがて発表されるDSM-ⅤとICD-11に反映されるに違いない。第2章で、従来からの操作的定義だけでなく、構成的定義という新しい考え方を提案しているのはICFを意識したものであろう。
本マニュアルでは第12章に「IQ水準が比較的高い知的障害のある人」という項を新たに起こしている点に注目したい。歴史的に言えば、Heberの第5版で提案された境界知能は知的障害に含むべきという観点が再度取り上げられたのだと思う。様々な刑事司法上の問題への支援という今日的支援の在り方と重なり極めて興味深い。
2012年3月
訳者を代表して
日本発達障害連盟(前)理事・日本発達障害学会(前)会長
横浜市中部地域療育センター 原 仁
(「訳者まえがき」より抜粋)

目次
知的障害の定義
第1部:知的障害の理解とそのアセスメント

  • 第1章:知的障害の定義
  • 第2章:知的障害を理解するための多次元的な枠組み
  • 第3章:診断、分類および支援体系においてアセスメントが果たす役割

第2部:知的障害の診断と分類

  • 第4章:知的機能とそのアセスメント
  • 第5章:適応行動とそのアセスメント
  • 第6章:知的障害の診断における病因の役割
  • 第7章:分類の多次元的アプローチ
  • 第8章:診断、分類および支援体制を展開する上での臨床的判断が果たす役割

第3部:支援体系

  • 第9章:知的障害のある人の支援ニーズ
  • 第10章:支援の一形態としての予防
  • 第11章:精神的健康と身体的健康に関連する支援
  • 第12章:IQ水準が比較的高い知的障害のある人の支援ニーズ

第4部:示唆

  • 第13章:公的施策のための示唆
  • 第14章:教育のための示唆
  • 第15章:支援を提供する組織のための示唆